KSメディカル

医療関連(主に整形外科、人工関節など)の情報をアップしていきます。

コロナ禍にやっていたこと

 

 



 

今まで旅行のブログをしていましたが、最近はコロナの影響もあり海外へ行けず、全くブログ更新ができていませんでした。

 

最近ふとブログ更新したい衝動に駆られたため、徒然なるままにこの3年間で新たに取り組んだことを振り返ってみたいと思います。

 

 

 

コロナ禍で新たに本格的に取り組んだことは3点あり、

 

・ボディビル(フィジーク)

・トレイルラン

・英語論文

 

でした。

 

そのほかにも細々とした小さな変化はありましたが、私のプライベートの可処分時間はほぼこの3点で占められていたように思います。

 

(ちなみに論文作成は厳密には完了していないのですが、おおよその目処はついているので2022年度内には終了しそうです。)

 

どれも本当に面白かったので、それぞれ簡単に説明します。

 

 

 

 

 

 

ボディビル(フィジーク)

 

 

ボディビルとは筋肉を人に見せつける競技で、

 

 

社会人になり飲み会など不摂生な生活により太ったことがきっかけで、2017年より本格的に筋トレ、ボディメイク(筋トレ、ダイエット)を開始しました。

 

以下、Before, Afterの画像(Beforeが恥ずかしい…)

 

 

 

 

2017年1月(約6年前)

 

 

 

見るも無惨な体型でした。

お腹周りの贅肉が情けない…

 

 

 

2017年1月より筋トレ開始。

 

 

2017年10月(9ヶ月)

少しずつ体型変化してきました。

 

 

 

 

 

2018年8月(1.5年後)

広背筋などがついてきたようです

 

 

 

 

 

2020年、コロナ禍になってから本格的にやることが無くなり、プライベートではジムで筋トレばかりやっていました。

 

 

 

2020年10月(4年弱)

減量して、腹筋も割れてきました。

 

 

このままでは筋トレに時間を費やしすぎて生活のバランスが狂ってしまうと思い、どこかで大会に出て区切りをつける必要に迫られました。

 

そんな経緯で2021年6月にフィジークの大会(いわゆるボディビルの大会)に出場を決めました。

 

 

 

2021年4月(減量中期)

まだ真っ白です

 

 

 

2021年6月(大会直前)

 

 

こんがり焼いた結果、板チョコのような腹筋が得られました(ジムの日焼けマシンを使用)。

 

 

計2大会に出場しました。いずれも決勝トーナメントへは行けませんでしたが、出場できただけで満足です。

 

 

減量はかなりキツかったです。

信じられないくらいハードなことをやっていたのは確実で、体にかなりの負担をかけた(もはや毒)と心から思います。一般の方々にはあまりおすすめできません。

 

ちなみに、コロナ禍のおかげで減量が成功したと思っています。飲み会ではついつい周りに流されて飲み食いしてしまいますからね(それを契機に爆食してしまうリスクも高い)。

 

 

大会後は「筋トレは週に2回まで」と決めて、やりすぎて時間を費やしすぎないよう注意しながら体型を維持しています。

 

 

 

「ボディメイク(筋トレ、ダイエット)をすることのメリットは何か」

という問いに対して、

 

一般的には

 

・健康的な生活になる(自然と無意識に)

・ストレス低減

・知識の蓄積(栄養学、生化学、解剖学、運動生理など)

・セルフコントロールによる達成感、自己肯定感が得られること

 

などが挙げられると思います。

 

どれも重要ですが、その中で一番大きいと感じたのは「セルフコントロール」でしょうか。

自分の意思で(多少の苦労をして)体型を獲得することは自分に自信をもたらし、必ず自己肯定感を高めてくれます。

 

カッコよく言えば、

 

身体だけでなく、人生(全て)が変わる

 

という感じでしょうか。

 

一般の方々は大会に出るほどハードにやる必要はないと思いますが、それでも少し減量したり運動することを強くお勧めします。

 

 

 

 

 

トレイルランニング

 

 

 

 

トレイルランニング(略してトレラン)と聞いて、「何それ?」と思う方が多いと思います。

 

これは正式な競技にもなっていて、簡単に言うと「山を走る競技」です。

「山岳レース」と呼ばれたりもします。

通常、登山ではトレイル(未舗装の道、登山道)を歩きますが、そこを走るのがトレランです。

 

 

 

登山との大きな違い(メリット)として、

 

・速く、長く移動できる(通常1泊2日のルートを日帰りできたりする)

・荷物が小さく軽い(専用のシューズとザックあり)

・山の滞在時間が短いため、リスク(例えば雨や落雷などの自然災害)を回避しやすい。

 

などが挙げられます。

 

デメリットとしては、

 

・登山道が混んでいる時に走れない(周囲に迷惑になるので)

・自分のペースに合う人が少ないので基本的にソロ(一人で登ること)になりがち

・シューズがすぐにすり減る

 

 

などでしょうか。

 

 

 

私がこの競技を始めたのは2017年です。

 

大会歴は以下の通り、

 

2017年 

鹿島槍トレイル 32km(4位/169人)

国頭トレイル 19km 完走

 

2019年

八王子ファントレイル 24km 完走

上州武尊トレイル 35km 完走

 

2022年 

軽井沢トレイル 45km  (83位/473人, 7時間11分)

越生トレイル MAX 80km (7位/111人, 13時間45分)

 

 

最終的には160kmの大会への出場&完走を目指しています。

 

 

コロナ禍から始めたわけではないのですが、コロナで海外へ出なくなった分、2020年以降は山へ行くことが増えました。山を知るにつれてどんどん魅力にはまっています。

 

 

そもそも、

 

有酸素運動

自然(山林)

 

はいずれもストレス低減効果が抜群にある因子のようです。

この2つを掛け合わせると言う意味で、トレイルランは私にとって最強のストレス解消になっているのかもしません。

 

 

ちなみに私は群馬県在住で、例年は近隣の山(例えば浅間、妙義、皇海山、谷川、秩父方面など)に行くことが多く、シーズン(7-10月頃)は主に南北アルプス(長野、山梨方面)へ行っています。

 

金曜日か土曜日の夜に現地の登山口で車中泊し、朝4時頃に出発し、日帰りなら20km程度、1泊2日なら40km程度を走破して、日曜日に戻るようにしています。

 

現在は優れた天気予報アプリがありますので、それをみながら山の行き先を決めています。

 

 

 

2022年に行った山は、

 

4月

雲取山(三峰ピストン、日帰り)

女峰山

 

5月

雲取山(三峰ピストン、日帰り)

軽井沢トレイル(45km)

 

6月

甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根、日帰り)

 

7月

甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根、日帰り)

 

8月

皇海山(日帰り)

針ノ木岳サーキット(日帰り)

飯豊山〜大日岳ピストン(1泊2日)

 

9月

西穂高〜北穂高(1泊2日)

農鳥〜北岳縦走(日帰り)

鹿島槍〜白馬縦走(1泊2日)

飯豊山〜大日岳ピストン(日帰り)

裏銀座〜読売新道周遊(1泊2日)

 

10月

甲斐駒ヶ岳(黒戸尾根〜八丁尾根、日帰り)

越生トレイル 80km

 

 

6月にはラグビーの試合でハムストリングを肉離れしたり、7月にはコロナになったりしてシーズン前半は行けていませんでしたが、8月下旬より調子を取り戻してようやく再開できました。

10月頃、シーズン後半には心肺機能が完成するので長い登りでもほとんど疲れなくなってきます。

来年はトレイルランの長距離の大会(次は100km以上)を目指します。

 

 

 

 

「なんでトレランをやるの?」

と、よく聞かれることがあります。

キツくて危険、時間もお金もかかるのになぜやるのだろう?という気持ちはよく分かります。

 

あらためて聞かれると、

私も「なんでだろう(゚o゚;;」

って思います。

 

なぜトレイルルランをやっているのか、

それは恐らく楽しいからに他ならないと思います。

 

 

言葉で表現するより、私のお気に入りの稜線を見ていただければ納得いただけるかと思います。

 

こんな感じの稜線↓



 

 

いかがでしょう?

走りたくなってきませんか?笑

 

 

僕はこの画像を選んでいる時点で、ワクワク&うずうずしてきました^^;

 

 

来シーズンも沢山登りたいですね。

 

 

 

 

 

 

 

英語論文

 

 

私は整形外科医(10年目)なので、そろそろ論文を書かなければならないと思っていました。

 

 

「論文」という言葉は誰でも耳にしたことがあると思いますが、一般の方で実際に原著論文(特に英語のもの)を読む人は少ないと思います。

まして、自分で英語論文を書く人は超レアだと思います。

 

 

そもそも論文とは、

 

「意見を述べて議論する文章。特に、学術研究の成果を筋道立てて述べた文章(Oxford辞典より)」

 

とのことです。

 

医療は日進月歩で発展しており、言い換えると未解明の問題だらけです。そのため、医者は医療を提供する存在(臨床家)でありながら、研究を通じて情報をアップグレードして発信することも重要な責務だとみなされています。

 

新しく得られた情報を後世に伝えるには主に論文という形式で伝えます。パブリッシュした論文が専門雑誌に載ることで世界中の人がアクセス&閲覧できるようになり、さらに論文という体裁で載せることである程度の論理的な整合性が保証されるわけです。

 

私は2022年7月に初めて1本の英語論文がパブリッシュされ(これは殆ど上司の先生が作成してくれたため、自分で作ったオリジナルとは言えないのですが…)、現在もう一本の論文を作成中です(近日中にsubmission予定)。

 

 

これについては長くなるのでまた後で記事を書くつもりです。

 

 

 

 

 

 

以上、コロナ禍に私が取り組んでいたことのまとめでした。

 

 

そのほかにも、犬を飼ったり、婚活にチャレンジしたり(失敗しましたが)、クライミングに取り組んだり、大学院試験に臨んだり、いろいろ細々としたことはやっていました。

 

 

ただ、上記の3点が殆どのウエイトを占めていましたので簡単にご紹介させていただきました。

 

 

そろそろコロナ騒ぎも終了しましたね(感染者は多いですが、重症化しないのでそこまで騒ぐ必要無さそうですね)。

 

来年はいよいよ本格的なAfterコロナになりそうです。

primary TKAにおけるROMと “happiness” との関連、の論文

primary TKAにおけるROMと “happiness” との関連

 

 

J.D. Stephens et al. / The Journal of Arthroplasty 37 (2022) S105eS109 

USA, OhioのStephens JD先生の論文です。

Journal of Arthroplastyより2021年にpublishされました。

 

 

 

<Background>

TKAのoutcomeを計測する方法は、たとえば靭帯StabilityやROMなどのObjective measuresからPROMsまで、外科医はTKA後の”success”を測るための最善の方法を決めることにevolveしている。

しかし、どのアウトカムを使用するか、についてはコンセンサスはない。20%の患者は不満足である、と報告されているが、理由はmultifactorialでclearlyにelucidatedされていない。


Knee ROMは患者の満足度やFunctional performanceに影響すると報告されている。

しかし、いくつかの報告ではROMの変化の程度が患者満足度の影響力のある因子であり、必ずしもROMの絶対値が獲得しなければならないわけではない。

一方で、他の報告ではKnee ROMは患者満足度に影響しない、という報告もある。

 

TKA後のアウトカムを計測する今までのスケールではADLの障害と関連していたが、患者満足度やQOLをFullyに評価することはできなかった。それゆえに、PROMsは注目を浴びている。

ある一定のROMはFunctional activityに必要だが、すべての患者は個々において達成すべきTarget ROMが存在する。

今回の研究では客観的Knee ROMとPatients Happiness with their ROM In the early postoperative period after primary TKAを調べた。

 

 

<Methods>

 

Retrospective study、対象は901患者(1008膝)。

術前、または術後に”Happy with their ROM”(HWROM)についての質問をされ、Yes or Noで解答。

術前には84%、術後は94%が解答し、両方解凍したのは802膝(80%)。

患者は6-12週で屈曲90°に満たない場合はManipulation under anesthesia(MUA)を受けた(医師、患者の判断で)。

 

ROMの記録は仰臥位で記録され、Maximal passive knee flexionがstudyに用いられた。

 

また、ROMだけでなく患者の年齢、性別、BMIなどの疫学情報を記録しました。

 

 

平均年齢66歳(日本より大幅に若いですね)、女性の割合が66%でした。

 

<結果>

 

平均して術前は110±16°、40%の患者がHWROMだった。

術後は平均して106±13°、76%がHWROMだった。

平均して-5±17°であり、術前より低下していた。

HWROMと答えたのは統計的にOlderの患者だった。

そしてよりBMIが高かった。しかし、Genderは相関しなかった。

 

HWROMの患者の術後ROMとROMの変化は109°、変化量は+2°だった。

NHWROMは98°、変化は-12°だった。

 

低い術前ROMの患者はHWROMに対してポジティブな変化をもたらしやすかった(f ratio = 41, P < .001) 。

同様に、術後ROMが高い患者の方が、HWROMをもたらしやすかった(f ratio = 6.7, P = .001)。

 

 

 

Table.1

Happy with ROMとNot Happy with ROMグループにおける、患者背景とばらつきについての比較

 

 

 

 

 

Screen Shot 2022-06-20 at 10.12.37.png

 

 

 

・年齢が高い方がHappy

BMIが高い方がHappy

・術後ROMが低いとNot happy(当然か)

・男女差なし(少し意外)、左右差なし

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig1には6週におけるROMとHappinessの関連についてのLogistic relationshipがある。

青色より上はHappyであり、下はNot happy

 

Screenshot 2022-06-09 at 7.30.10.png

 

 

 

 

 

 

 

 

 

術前にHWROMと答えた患者は40%で、術後は76%だった。

両方においてHWROMと答えた患者のうちで43%はHWROMの改善を認め、50%は変化しなかった。

7%は増悪した。

平均のPost ROMとROM変化がTable2に記載あり。

 

 

Screenshot 2022-06-09 at 7.31.12.png

 

Table 2によると、改善した群ではROMの改善を認めなかったがimprovedになっていた。

No change groupではROMは-8±14°悪くなっていた。

Worse groupでは-19±20°増悪していた。

(ROMがわずかなプラスまたは維持される程度であってもimproveしていた。)

 

 

7.2%(73 knees)でMUAsが行なわれた。

MUAを行った患者は術前ROMに違いは無かったが、術前のUnhappy with ROMの保有率がMUAを施行しなかった群と比較して有意に高かった(78% vs 60%; P = .003 ←前者がMUA施行群のunhappy解答率)

Pre MUAを行った群での術後ROMはMUAを行った群と比較して有意に低かった(88 ± 13 degrees vs 107 ± 11 degrees, P < .001

さらに、MUAを施行した患者はNot happy with their ROMとなる確率が高かった(72% vs 28%, P < .001

これらの結果では、一方で、MUAを施行した患者のうち28%はMUA前にHappy with their ROMだった。

 

MUAをしてもしなくても、変わらないのではないか?

 

 

 

<考察>

 

今回の研究のメインのoutcomeとして、

・TKA後6週において、ROMはOverall reductionを来していたが、Happy with their ROMの割合は増加していた。

・ROMとHappiness with ROMの関連は、直線的ではなかった。(Fig.1)

ということが挙げられる。

 

・他の研究でもROMはPatient satisfaction, PROMなどと相関するという報告も多い。

一方で、PROMSやfunctional scoresにおいて、115°得られた群と125°得られた群でno differenceだった研究(Meneghini et al.)や、high-flexion implantとstandard implantの比較で、high flexion implantでは7°の改善を認めていたにもかかわらず、患者満足度にはno effectであった研究(Thomson et al. BMC 2013)などが紹介されている。

 

・今回の研究では、患者はHWROMをhigh-flexion thresholdsを達していないで報告しており、このことは患者のHWROMにインパクトを与えるROMの程度には限界があり、そしてROMの変化は 享受するHWROMに対してより高いインパクトを与えるということを示唆している。

 

 

・ROMの小さいネガティブな変化はHWROMに直接の影響を与えなかった。

HWROMがno changeだった群では、平均してROMの少しの低下があった。

 

Miner et alは、患者満足度とQOLはoverall functional statusによりもたられ、knee ROMのみで決定する訳ではない、と報告した。同報告では、95°以上と95°以下の術後ROMの患者では、患者満足度において有意差が無かったと報告した。

 

今回の研究でもHWROMの患者さんの半数でno changeと報告していたが、ROMがfunctional tasksをperformするのに十分であれば、HWROMは保たれるのかもしれない。

 

しかし、Drastic reduction in ROMはHWROMの低下を引き起こしうる。

 

 

 

MUAは術前ROMと関連しなかった。MUAを受けた患者では術前のUnhappiness with ROMが有意に多かった。術前のROMは術後ROMの予後因子である、と言える。

 

 

 

<結論>

・overall でknee ROMは低下していたにもかかわらず、HWROMの患者割合は術後6週において術前より多くなっていた。

術後knee ROMは、患者のHWROMと相関していた。

 

・しかし、HW ROMで改善を認めた患者において、ROMの有意な改善は認めなかった。

 

 

 

 

<論評、感想>

 

・この論文では他の論文で述べられているようなPROMやFunctional outcomesに着眼するのではなく、”Happy” or “not happy”に対して聞いていることが面白い。切り口をHappinessにすることで、我々が普段気にしているROMの些細なテクニック(例えば骨切り量や角度など)にのみ注視するのではなく、患者全体を俯瞰的に見られるようになる(気がする)。

また、術後にROMが改善しなくても、functional statusが保たれていれば概ねhappyであるという点も注目に値する。大事なのは絶対値でなく変化量であり、Change in ROMが大きく悪化しなければHWROMは保たれ、必ずしも絶対値を獲得しなければならない訳ではない。

結論にもある通り、Overall knee ROMは低下しているにもかかわらず、術前に40%のHWROMだった割合が術後に76%に改善している点も面白い。

 

・実際、私の普段の臨床経験的にはROMで不満足という患者さんは少ない。実際、不満の原因は痛み(AKP)が最多。

この論文を受けて、ROMの絶対値を得ることにこだわりすぎず、今まで通り適切なTKAを続けていけば良いという結論に至りました。ただ、術前のうちにROMが術前より悪くなることが多い点は説明しておくべきだろう。

 

・ちなみにTable  1でBMIが高い患者の方がHWROMが高いという点に関して、今まで(オペ的に)抵抗感のあったBMI高値も案外悪くないのだろう、と思うようになりました。